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『Made in Japanの力』について (商売のヒント vol.40)
 

年の瀬も近づいてまいりました。なぜか慌ただしさが日に日に心の中にさざ波を立ててくる今日この頃ですが、皆様いかがお過ごしでしょうか。

衆議院選挙も自民党の圧勝、民主党の惨敗で幕を閉じましたが、私自身も今回はちょっと怒りを込めて1票を投じました。この不景気はバブル崩壊に始まり20年にもなりますが、政治家の責任はかなり重いものではないでしょうか。なかでもバブルの風船に針を刺した宮沢喜一、5%消費増税の橋本龍太郎、日本まで壊した小泉純一郎、そして10%消費増税の野田佳彦の各首相の責任は特に重いと思います。その理由は、宮沢首相は別格として、皆、均衡財政を政策として掲げている点にあります。つまり歳入と歳出がイコールで借金が増えないようにする政策です。これは財務省(大蔵省)の役人の発想で、この政策を掲げた国は過去幾度となく失敗を繰り返しています。ただ、小渕内閣と安倍内閣だけは財務省(大蔵省)の役人の言うことを聞かずに逆の政策をとっていました。ただ、二人ともなぜか健康上の理由で総理を辞任しています。安倍新総理の選挙期間中の政策の言行一致とご健康をお祈りいたしております。

毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第40回目を始めましょう。

『Made in Japanの力』について

12月9日の夜、私は、日曜日は大体夜10時30分になるとベッドに行って本を読みながら寝るというのが習慣なのですが、この日はたまたまテレビのチャンネルを回してみると興味深い特集がありましたので、そのまま見入ってしまいました。ご覧になった方も大勢いらっしゃると思いますが、フジテレビのMr.サンデーという報道番組のようです。私は初めて見て、しかも10時半ころからの特集の部分だけなので、そこまでの内容がわからないため報道番組のように感じられただけで確かではありません。その番組の特集では、この不況のさなか頑張っている中小企業が紹介されていました。それも構造不況の代名詞のような繊維業界で、ひときわ光を放っている中小企業3社です。それではご紹介いたします。

青森 サンライン

青森県の岩木山のふもとに弘前市という桜とリンゴで有名な町がありますが、その弘前市に隣接したところに田舎館(いなかだて)村という人口8千人程度の村があります。古くから田舎館という地名のようですが、あまりにも田舎でツッコミようがない地名ですね。私も初めて知りました。そんな田舎館に螢汽鵐薀ぅ鵑箸いλダ醜場があるのだそうです。ネットでも調べてみましたがホームページもない会社のようです。そんな地域的に超マイナーな縫製工場でパリコレの常連デザイナーでイギリスのポール・スミスの服を作っていて、なおかつ世界でサンラインでしかできないとポール・スミス自身が語っているのです。ポール・スミスというデザイナーも初めて知りましたが、日本でもショップがありかなり有名な方のようです。震災の時はチャリティーにも参加されたそうで、天皇陛下がイギリスに行ったときにお礼の言葉をかけられたそうです。そのようなポール・スミスのデザインする服ですが、胸ポケットの部分に幅5ミリで別の生地を縫い付け、段差をつけるのが世界中でサンラインしかできない技術なのだそうです。そのほかにも、表側に3つ縦にポケットが並ぶ服では同様の段差を一番上が幅5ミリ、真中が6ミリ、下が7ミリというように縫製する指示を完璧にこなすそうです。ポール・スミスのデザインかどうかわかりませんが天皇陛下の即位20年式典の時にEXILEが着た服もサンラインが作ったそうです。EXILEが何人いるのかわかりませんが結構人数がいたように記憶していますので大変だったのではないかと思います。

鎌倉シャツ

鎌倉シャツというYシャツメーカーの噂を私でも聞いたことはありますが、高級Yシャツを手ごろな値段で提供しているお店程度にしか知らずにいました。その鎌倉シャツがニューヨークにお店を出したところ、とても評判になっているとのことです。私が縫製のことを知らなすぎるのかどうかわかりませんが、シャツ文化の西洋人には、その違いが判るようです。値段は、日本では6000円程度でアメリカでは80ドル程度ですが、アメリカ人は「この値段でこの素材、仕立ては信じられない」と言っていました。確かに、私も今まではたぶん中国製のYシャツを買い与えられて、素直に着ていただけだったのですが、別の店で背広をイージーオーダーした際におまけでYシャツもオーダーメイドしてくれるサービスがあり、作ってもらい着てみると、とてもしっくりなじむ感じがして着心地がいい経験をしていたところだったので共感できました。

鎌倉シャツの縫製は、生地と生地の合わせ目を二重に袋とじのようにして肌に不快感を与えないよう丁寧に縫製されているそうです。裾の部分もカーブに沿ってしっかり同じ幅で縫製してあり、仕事の質の高さが自慢のようです。ホームページに会社の紹介が詳しく載っていますので、興味のある方はご覧になってください。ニューヨークのお店を紹介している時に、あるアメリカ人が蝶ネクタイを自慢していました。その蝶ネクタイも鎌倉シャツではないのでしょうが「Made in Japan」で縫い方が違うと自慢していました。

山形 佐藤繊維

山形の寒河江というところに佐藤繊維という会社があります。寒河江市は山形市の北西にある町ですが、こちらも人口4万人程度の地方のちいさな市です。

その寒河江で紡績工場をしているのが佐藤繊維だそうです。佐藤繊維は「モヘア糸」という糸を極限まで細く紡ぐ技術がウリだそうです。「モヘア糸」と言われても私にはピンときませんが、アンゴラヤギの毛で作った糸で通常は1グラムから20メートル前後にするのがやっとだそうですが、佐藤繊維では50メートル近くまで細く紡ぐ技術があるそうです。テレビで紹介された紡績機は決して最新型の様には見えず、かなり旧式の機械のように見えましたが他にまねのできない技術があるのでしょう。その佐藤繊維の「モヘア糸」を有名にしたのがオバマ大統領のミシェル夫人が大統領就任式で着ていた黄色のカーディガンだそうです。二ナ・リッチ社製のカーディガンだそうですが、そのカーディガンに使われたのは佐藤繊維の「モヘア糸」なのだそうです。

 

30分程度の特集だったので、あまり深いところまでは紹介されませんでしたが「Made in Japan」の力というか、信頼性は世界中にまだしっかり根付いているように思いました。この3社に共通しているのは「ものづくり」へのこだわりはもちろんですが、日本で作ったものを世界で売るということのように思いました。戦後、日本人は自分達が貧しくても世界の人の為にいろいろな「ものづくり」で貢献し、輸出を伸ばして豊かな国を築いてきました。そして自分達が豊かになると自分達の為に「ものづくり」をするようになりました。それが冒頭のバブル以降、国内消費は低迷を続けています。もう一度、世界に目を向けるときが来ているように思われます。構造不況の繊維業界でさえ、このような成功例があるのですから「なんでも安く大量に」というのはユニクロみたいなところに勝手にやらせておいて、自分達の「こだわり」をわかってくれる人たちの為に進んでみるのを「生きがい」にしてみるというのはいかがでしょうか?

author:吉村 以知郎, category:2012年, 11:26
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『山田流経営の神髄』について (商売のヒント vol.39)
 

秋も日に日に深まってきています。例年に比べずいぶん遅い初雪の便りが北海道からも聞こえてきました。旭川では11月18日に平年より26日、昨年より46日遅い初雪だそうです。東京でも同じ日に木枯らし1号が、これも昨年より23日遅い「初木枯らし」だそうです。私もこの木枯らし1号を体感しましたが、ずいぶん生温い木枯らしだったように思います。去年の冬はとても寒い冬でしたが、冬の到来も今年よりは3週間以上早かったのかもしれません。

私は高校時代、原チャリで通学していたのですが11月になると函館は皮手袋なしではハンドルを握る手が凍りつきそうになるほど寒くなり、粉雪交じりの中、凍えながら通学していたのを思い出します。なぜか、その時の記憶だけは鮮明に残っています。高校時代の3年間のうちの、ある特定の日の特定の時間の特定の場所での出来事、着ていた服も、顔に当たる粉雪の冷たさも不思議と記憶しています。もっと楽しいことや嬉しいことなどあったはずなのに、ここまで鮮明に憶えているものは、あと2つか3つくらいしかありません。その時、35年後にこんなことを書くなんて思いもよらなかったのですが・・・。

毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第39回目を始めましょう。

『山田流経営の神髄』について

中小企業庁が2010年頃から「日本でいちばん大切にしたい会社大賞」という賞を設けて表彰しています。その第1回目の大賞受賞会社が岐阜にある未来工業株式会社という会社です。今回は、その未来工業蠅料篭伴圓埜什澆倭蠱面鬚了嚇直蔀忙瓠81)のインタビュー記事が月刊中小企業家2012年9月号に掲載されていましたのでご紹介いたします。

【儲からない会社の真似はしない】

企業とは何だというのが問題です。私は金儲けだと思っています。金儲けのために会社をつくって、誰が儲かっているのか。

日本人は一番馬鹿です。なぜ馬鹿かというと、大企業から小企業まで、みんないいものを安く、どこで儲けるのですか。4億円くらい稼げば高額といえるが、政府は、たった4千万円の経常利益があれば高額所得法人と言い、その高額所得法人がどれだけあるかというと8万社あると言っている。265万社中たった3%です。大企業で経常利益率の目標がわずか5%という会社がごまんとあるのだから、大企業も中小企業も儲かっていない。金儲けはしたい。どうしたらいいのか。たった一言、反対をやればいい。それでやったのが報連相の禁止です。大企業が何十年もやってきても儲からないのだから、なぜみんなそれに気がつかないのか。

報連相を禁止、成果主義の禁止、ノルマ主義の禁止、残業の禁止、携帯電話も禁止と山ほど禁止したことがあります。

残業を禁止して、なぜ儲かるか。残業して儲かるはずがない。残業手当は余計に払うのですよ。公表されている日本のサラリーマンの平均月収が30万円、世界でいちばん高い。残業したらもっと多く払う。それで儲かるはずないだろうと思う。

コストが上がるから残業手当は支払いたくない。だが残業手当を払わないといい会社にはなれない。だから残業は禁止にしようということになった。サービス残業というのがあるが、同友会の会員はさせてはいけない。あれは犯罪です。

おまけに日本人は不思議で、たくさん買ったらまける。たくさん買ってもらったら残業するわけよ。残業したら人件費が上がる。それで、まけてどうするのかね。勘定が合わないから、残業禁止です。

【ユニークな発想の根源】

出さざるをえない生活の知恵でした。未来工業が作るスイッチボックスやコンセントプラグは、寸法から材料まで規格が法律で決まっています。1965年に4人で始めましたが、向こう側には松下電工や東芝と大きな企業がいました。そこと同じものを作らなければならない。誰が未来工業のものを買うか。売れなかったら飯を食えない。何万人もいる他のメーカーと同じものを作って買ってもらうにはどうしたらいいのか。というところから始まりました。

そこで、電気工事の職人が使いやすい、法律に関係ない取り付け方に工夫しました。差別化しなければいかん。未来工業ファンを作らなければ飯は食えないというのがスタートです。

未来工業は65年に1点の商品から始まり、初年度は750万円の売り上げでした。今商品は3万点ほどあるそうです。すべてよそとは違うものを作っています。突然お客さんが喜ぶようなものを工夫することはできないから、日常茶飯事どんなものでもいいから人と反対のことをして、工夫する癖をつけようというところから出発しました。

会社は儲けて、社員にいい給料を払い、豊かな生活をしてもらいたい。二つ目は税金を払って社会貢献する。これがいい会社の条件だと思っています。いいものを安くと言うものだから過当競争になっている。今、過当競争をやっていないところなんてない。その中で社員だけにはいい給料を払いたい。しかし払えない。では何をするか。コストの削減しかない。

今回の原発の問題で、テレビや新聞の取材が山ほど来ました。みな何を言うかというと、「節電」です。これは間違っている。節電する義理はないが、「倹約」しなければならない。だから、電気を消しています。立ち上がった時は紐を引いて席を立つという行動で、倹約をする癖がつくと思います。仕事は体で覚えるのが一番いい。

勤務時間が短いとか休みが多いとか、それをやっている最大の理由があります。金儲けを誰がやるかというと、社長ではない。自分を見ていればよくわかる。社員が頑張らなければ会社は儲からない。社員に頑張らせるためにはエサをやればいい。このまえ同友会のどこかでしゃべった時、エサと言ったら叱られたよ。エサがダメなら餅、モチベーションが上がるから餅でもいい。

【中小企業の強みはどこにありますか】

ありません。他の真似をしてはいけないと言っていますから。創業以来、社長は率先して陣頭指揮をしてはいけないと思っています。コンサルタントの協会で話したら、変な顔をされました。

うちの会社に見学に来られる方もいると思います。見学するのに一人2千円かかります。年間一万人来ますから、2千万円の収入です。これ、いい商売になる。同友会の皆さんは仲間だから、一銭もいただきません。見学者に「未来せんべい」というお菓子を出します。この未来せんべいは世界中探しても、うちにしかない貴重品だよ。大垣の名物は味噌せんべいで、せんべい屋がたくさんある。この未来せんべいは社員が知らない間にせんべい屋に行って作ってくれと頼んだと思う。報連相がなかったからできたと思う。誰にも怒られずに勝手に作らせてもらった本人が一番喜んだはず。面白いから表彰しようと思ったけれど、それが誰だかわからない。こういうように、社員たちは何を考えてもいいし、考えたことをやらせてもらえるからうれしいと思う。喜びを感じることで、明日も頑張ろうとやる気になるだろう。そういうようになんでもやれることが「餅」だと思っています。

2010年1月3日の朝日新聞朝刊の2面に未来工業の給料が載っています。

これによると、65歳の年収が700万円とありました。これが未来工業の標準の給与ベースだろうと思っています。

同友会の皆さんは100%山田さんだからできる、うちはできないと言います。やりもしないでできないと言う。

週休2日制をやろうとした男がいました。他の経営者は、お客さんが働いているのに休んだら逃げられると大反対しました。その男は「僕も逃げられると思うけれど、山田さんがうまくいっているのだから、やってみるよ」と言いました。山田さんみたいに一度にはできないから、5年間かけて週休2日にするといって、実行したら売り上げも上がり利益も上がったそうです。餅をやれば社員たちは喜んで働いてくれますよ。

うまくいった例もありますが、基本的にはみなこわがってやりませんねぇ。

 

以上が記事の抜粋です。

 

結構有名な会社なのでみなさんご存知の方も多いと思います。ユニークな創業者の方ですが、記事に未来工業の社内風景が写真で掲載されていました。

工場かオフィスかはわかりませんが、天井から横断幕がいくつもぶら下がっています。その標語は「常に考える」「ナゼ なぜ 何故」と大きく書かれています。これが10メートル程度の距離に「常に考える」が2枚「ナゼ なぜ 何故」が1枚ぶら下がっています。たぶん会社中、天井からだけでなく壁や机まで書かれているように思います。一見、ユニークさだけが強調されているようですが本質は「常に考える」なのかもしれませんね。

author:吉村 以知郎, category:2012年, 11:23
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『専門家?』について (商売のヒント vol.38)
 

「秋の陽はつるべ落とし」と言われますが、あたりが暗くなる時間がどんどん早くなってきています。体内時計というものが本当にあるのかどうかわかりませんが、その体内時計とのギャップがこのように感じさせるのではないでしょうか。それはともかく、ノーベル賞受賞の京都大学山中教授のiPS細胞がいろいろ話題になっています。人間の皮膚の細胞から様々な臓器や神経細胞などが作れるようです。本人の細胞から作るので拒絶反応も起こらないそうです。網膜や心筋をはじめ、いろいろ応用が期待されている分野がかなりあるようですが、医学や科学の進歩には目を見張るものがあります。臨床応用にはまだ数年かかるようですが、該当の病気を持たれている方やそのご家族は一日千秋の思いで待たれていることでしょう。21世紀のペニシリンとなるかどうか、本当にこれからの研究に期待したいと思います。それに比べて経済の方では、あまりパッとした話題がありません。デフレの根本原因は、カネ余りや不足ではなく需要の減退にあると私自身は思っているのですが、人間の物欲を増幅させるiPS細胞を開発したらノーベル経済学賞ものかも知れませんね。

毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第38回目を始めましょう。

『専門家?』について

今回は税理士新聞というマイナー?な新聞がありますが、その2011年8月5日号に載っていた記事をご紹介いたします。「多士済済となりのサムライから」というテーマで連載されているものですが、その第4回として〜遺言の最大のテーマは『心を伝えること』〜という題で司法書士の河合保弘さんという方が書かれているものです。前文には「税理士と隣接士業者が一緒に顧客から相談を受けるケースの多くは、中小企業経営者もしくは個人資産家からのものであろう。今回は「遺言」という、多くの士業者が共に対応する機会が多いと思われるテーマについて、司法書士の視点から考察してもらった」とあります。

つまり、いろいろな士業(弁護士、税理士、司法書士など)が一堂に会して相談を受けるケースが多いと思われるパターンという認識で、遺産相続のための遺言について相談を受けるケースを想定しています。それでは、内容を見ていきましょう。

ある経営者の遺言

某中小企業のオーナー経営者であるA氏が、顧問契約をしている専門家を一堂に集めて、遺言の内容について相談している。

A氏の希望は、会社の株式を含む多くの財産を、家族に隠れて密かに交際している一人の女性従業員に与えたいというものであった。

さて、各専門家の反応。

弁護士「法定相続人から遺留分請求の裁判を起こされますよ」

司法書士「遺贈の登記やその後の株主総会の運営が難しくなりますよ」

社会保険労務士「人事面で混乱が生じますよ」

中小企業診断士「以降の会社経営に不安が出ますよ」

そして最後に税理士が発言した。

「多額の税金がかかりますよ」

------それらの発言は、確かに間違ってはいない。しかしA氏にとっては、非常に物足りない内容であった。

なぜなら、A氏が本当に伝えたかったことは、法律や税金のことよりも、どうして妻や子どもたちではなく、一人の女性従業員に財産を与えたいという気持ちになっているかということだったのだから。

後日談だが、結局A氏は、最も信頼できる占い師に相談を持ちかけた。精神的な安寧を得た後に、改めて各専門家の意見を伺った上で、立派な内容の公正証書遺言を書いたという。

税理士諸氏へのお願い

前記のケースでは、税理士は「節税」と「専門家責任」の観点において、極めて的確な指摘をしているが、A氏が本当に求めていたのは、そのようなことではなかったのだ。

実は、わが国における遺言の普及率は非常に低いのである。多くの中小企業経営者や個人の資産家たちが、「遺言」に対する誤った先入観を持ってしまっていることが原因なのかもしれない。

しかし、現実問題として、たった一枚の遺言書さえあれば防止できた揉め事(節税も含む)は少なくない。そこで税理士諸氏には、是非とも「正しい遺言」を普及させる取り組みをしていただきたいのである。

ただし「遺言の最大のテーマは『心を伝えること』」という本質を忘れないでいただきたい。

遺言は、暗い意味合いが込められていることが多い「遺書(いしょ)」とは本質的に異なるのである。そういうわけで、経営者や資産家などに暗いイメージを持たれないために、「遺言」を法律上の読み方である「いごん」と発音することも可能な限り避けるべきであると考える。

また、経営者や資産家の遺言は、極めて奥深いテーマを持った文書であるから、多彩な分野の専門知識が必要になる場合が多い。したがって、対応に迷われた時には、ただちに他士業の助力を求めていただきたいと思う。

「節税」という魅惑の言葉

経営者や資産家にとって「節税」という言葉は実に魅惑的である。しかし、世間にはそれを過剰に意識するあまり、経営や財産管理の本質を見失ってしまっている人が少なくない。

いわゆる「事業承継」においても、ともすれば税金対策が先に出てきて、「承継するに相応しい後継者の育成」という最大のテーマを忘れているケースが見られる。

もちろん無駄な税金を払う必要はないし、節税の観点は常に重要である。しかし、それが必ずしも最優先課題ではないということは認識しておかなければならない。

税理士法1条で、税理士は「独立した公正な立場」で納税者の信頼に応える存在であることがうたわれている。これは特定の者の利益のみを代弁する立場の資格者とは一線を画する。きわめて特徴的な立ち位置なのではないだろうか。常にバランス感覚を持つ専門家として、税理士諸氏の活躍に大きな期待を寄せるものである。           終

 

この河合司法書士の文章はフィクションであるかノンフィクションであるかわかりませんが、我々専門家と呼ばれる職業の者にとって非常に身につまされる文章であることは確かです。経営でも、遺言のような法律行為でも、どうしても専門家としての「メガネ」をかけて見る癖というようなものがあります。相手が法律的にどうなるというような質問の場合は事例のような回答でいいのでしょうが、この事例の経営者は明らかに「矛盾」をどう解決すべきかということが重要であって、その「矛盾」が問題だということがわからない人間に何を相談しても無駄ということになるでしょう。私自身、この点を常に自戒しているつもりではありますが、その問題そのものを全く理解していない、あるいは問題の認識すらできない税理士も知り合いにはいます。

それはさておき、河合司法書士が伝えたかったのは遺言の作成について経営者や資産家の「心を伝える」ということも、もう一つの点でしょう。

遺言を実際にご覧になった方はどれほどいらっしゃるかわかりませんが、遺言は単に財産を誰に渡すということだけが書かれているわけではありません。前文があり遺言作成者の気持ちが2〜3ページ書かれています。そのうえで、財産を誰に渡すということが書かれています。河合司法書士はこの前文をちゃんと表現することによってトラブルを回避できる可能性が高まりますということを伝えたかったのだろうと思います。

現実の実務では、公正証書遺言を作成するときは証人2人と公証役場に行って作成するのですが、公証役場には文例が置いてあり、公証人がその場で聞き取った遺言者の気持ちを文例に当てはめて作っているようです。確かに第三者の私が読むと少し胸にジーンと来るような文章となっています。ですが、あくまで遺言者本人の言葉ではなく、その場限りの感動で終わってしまうケースが多いように見受けられます。遺言は遺言の執行人ということで弁護士や信託銀行の社員が仏前で読み上げるのですが、前文の時は神妙に聞いていた相続人が財産分与に移って顔色が変わるのを見たことがあります。確かに本人の言葉で書けば少しは効き目があるようには思えますが、もらう財産が少なかった相続人にはどの程度効果が持続するかは疑問が残ります。ただ、事例のような女性従業員が財産をもらうためには、遺言書がなければ何ももらうことはできないので女性従業員にとっては必須のものとなります。

私自身、相続案件を結構経験しておりますが少なからず争続となった案件はすべて遺言書がある相続でした。事例のような「矛盾」の解決のための万能薬とはなりませんが、ある程度の方向性を示してくれる処方箋にはなっていると思います。

このような話を書くと思い出すのがオリジン弁当の相続です。創業者が心血を注いで作り上げた会社の株式を、相続人の妻子がドンキホーテに売却し、ドンキホーテは更にイオンに売却したという話です。ドンキホーテに巨額の利益をくれてやるくらいなら、本当に女性従業員ではないけれども、共に会社を作ってきた社員に相続(遺贈)させた方がどれほどましか、創業者の無念が想われてなりません。

end

 

author:吉村 以知郎, category:2012年, 10:16
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『返せない借金供戮砲弔い董(商売のヒント vol.37)
 いつまでも暑さが収まらず暑い夏が続いております。今年の春もお彼岸までは寒い冬でしたが、お彼岸を境に季節が急に入れ替わりました。夕暮れの早さが秋の足音を感じさせますが、さてどうなることでしょう。

よく「どの季節が好きですか?」という会話がありますが、春が好きな人がいれば夏、秋、冬と人それぞれの答えがあるでしょう。私自身は秋なのですが、夏とか冬に比べて春や秋が短く感じられるのは身体に快適な陽気で毎日を過ごせるからなのかもしれません。

ちょうど9月の下旬から10月中旬にかけてなのですが三浦半島に秋谷港(あきたにこう)という小さな港があります。横須賀市の一部なのですが、相模湾に面していて富士山なども見えます。この秋谷港から見える夕日がとてもきれいなのです。今までいろいろなところで、きれいな夕日を見てきましたが私にとって最高の、心の奥深くにまで、いつまでも残る夕日は秋谷港から見た夕日です。同じ景色を見ても人それぞれの感じ方があるでしょうが、私自身あの夕日だけは忘れられません。

毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第37回目を始めましょう。

『返せない借金供戮砲弔い

さて、前回に引き続いて今回も「借金」のお話をしたいと思います。中小企業が借入を銀行に申し込むと、基本的には保証協会の保証付きの融資になると思います。大きめの中小企業には、保証協会の枠では足りませんので銀行のプロパー融資(直貸し)やシンジケートローン(銀行団融資)という方法がとられることもありますが、基本的には保証協会付の融資になると思います。保証協会がつかない融資は日本政策金融公庫(昔の国民金融公庫)の融資がありますが枠が少なく、保証人を取られる場合が多いので頑張っても1000万円程度になると思います。なぜ保証協会がつかないかはこれからお話しいたします。

信用保証協会というのは、各県に1つずつ47信用保証協会と5つの市(横浜、川崎、名古屋、岐阜、大阪)に1か所ずつ計52か所あります。銀行から融資を受ける場合、信用保証協会付の融資であれば融資額の数パーセントの保証料を、融資を受ける会社が支払う仕組みになっています。基本的には借入金額×保証料率×返済期間÷12という算式で決まりますので、借入金が多いほど、また返済期間が長いほど保証料は高くなると考えて間違いありません。また、返済期間の途中で全額返済したような場合には、残りの保証期間に対応する保証料は会社側に返還されます。従って、支払った時にいっぺんに費用化できず借入期間に応じて費用化していく性質のものです。いわば一時払いの生命保険のような性質を持っています。会社が借金を払えなくなった場合、会社に代わって銀行に借入の返済をしてくれる機関と言えます。ところが、話はそれで終わりません。生命保険であれば保険料を支払って、保険金をもらい残った借金の返済に充てて終わりですが、信用保証協会が銀行に立て替えた借金を、会社は信用保証協会に返済しなければなりません。つまり、生命保険とは全く違う性質のもので、保証料を支払う意味が全く分からない性質のものです。銀行だけが、信用保証協会付の融資であれば貸し倒れのリスクが全くなく、ただ寝ていれば自然とカネが増えていくというもので、銀行の為にあるような制度です。それでも世の中カネを持っている人が一番偉いらしく、この制度の不自然さをわかっていながら、しぶしぶ保証料を支払わされているというのが実情のようです。銀行も、こんな笑いが止まらない商売を続けていると質の低下は免れないようで企業を見る目というものが鈍ってきて、本来あるべき銀行の姿からずいぶんかけ離れたものになっているのではないかと個人的に思います。金融は大航海時代に船団を整えるために発達した経緯があり、金を貸す方も借りる方もお互いリスクを分け合っていたのが本当の金融の姿なのではないかと思います。航海に出ていく船に準備をするカネを貸し、インドなどからコショウなどたくさん積んで帰ってくると莫大な利益が出て貸したカネも返ってくる。だけれども途中で難破した場合には1銭も保証されない。そのリスクの値踏みができるか否かが金融業の腕の見せ所のはずです。以前、知り合いの北海道拓殖銀行で海外支店の支店長を経験して、倒産する前に税理士として独立された方のお話を聞いたことがあります。スイスかどこかの出入国のチェックの際に職業を聞かれたので躊躇なく「バンカー(銀行家)」と答えたところ「違う。あなたはバンクエンプロイイー(銀行の使用人)だ」と言われた経験を話してくださいましたが、まさしくそのような状況ではないのかなとも思います。小口のカネの貸し借りは旧約聖書の昔からあったようで、旧約聖書にもモーセがシナイ山から降りてきて神との契約の言葉を民衆に伝えるくだりに「わたしの民のひとりで、あなたのところにいる貧しい者に金を貸すのなら、彼に対して金貸しのようであってはならない。彼から利息を取ってはならない」(出エジプト記22-25)などの記述があります。やはり西洋は契約の世界で「同胞(私の民)から利息を取ってはいけない」なら「同胞(私の民)ではない者からは利息はとっていい」という解釈になるようです。まさに「ヴェニスの商人」の世界ですね。もし、日本で古事記とか日本書紀に「同胞から利息をとってはいけない」と書いてあったとしたら「同胞」が「人類みな兄弟」という解釈になって、日本では利息はとってはいけないことになっているのではないでしょうか。

話が脱線しましたが、

1.  銀行は会社にカネを貸す

2.  会社は信用保証協会に保証料を払う

3.  会社が借金を返せない場合、保証協会は銀行に会社に代わり借金を払う

4.  会社は銀行ではなく保証協会に残りの借金を払う

ということになります。

つまり、会社は相手が変われども借金返済の義務を負うことに変わりはありません。そのときに、会社も連帯保証している経営者も借金が払えない場合はどうなるのでしょうか。例えば、会社と経営者が自己破産したような場合です。このときは、信用保証協会は銀行に代わりに払った分が全額貸し倒れになります。そうすると、信用保証協会のカネはすぐに無くなってしまうでしょう。ここにもう一つのからくりがあります。信用保証協会は、日本政策金融公庫に対して保険料を支払っているのです。つまり貸し倒れになった場合は、保険金として日本政策金融公庫から返ってくることになります。最終的にババを引くのは日本政策金融公庫となるのです。日本政策金融公庫の事業報告書を見ると平成20年10月にできましたので、それから平成23年3月まで2年半の累計の赤字は2兆6500億以上となっており、そのうち信用保険業務の赤字は2兆4400億円に上っています。つまりババを引いた金額が単純に年1兆円くらいになるということです。こんな大赤字がいつまで続くかはわかりませんが国の予算も限られている中、無制限というわけにはいかないのではないでしょうか。また結局、保証協会をつけても最後におハチが回ってくるのは日本政策金融公庫なわけですから、日本政策金融公庫は保証人を付けてカネを貸すということになります。

次に、実際にどのような流れで代位弁済(保証協会から銀行に借金を払ってもらうこと)が行われるかご説明しましょう。

保証協会に代位弁済をしてもらおうと会社として決めたら、まず毎月の返済をストップします。基本的に銀行の預金通帳から借金返済は引落されますので預金通帳に残高を残さないようにします。また、同じ銀行に定期預金などがあると差し押さえられたりしますので事前に別の銀行に移すことも必要です。同様に売掛金の入金口座も借入のない金融機関に変更しておくことも大切です。ケンカする前には周到な準備が必要となります。

そうして、3か月ほど返済をストップすると4か月目か5か月目に銀行から会社と保証人になっている代表取締役個人に内容証明郵便が届きます。「あなたは期限の利益を失いました。遅延損害金と合わせて××円をいついつまでに支払ってください」というものです。この内容証明は銀行が保証協会からカネを引き出す儀式ですから、別に気にする必要はありませんしカネを返す必要はサラサラありません。そこからまた1か月ほどすると、今度は保証協会から連絡郵便がきます。「あなたの借金を銀行に代位弁済しました。つきましては今後の返済について話し合いをさせていただきたい」というようなものです。この郵便が来たら、そこに書いてある担当者に連絡を入れて日時を打ち合わせて会いに行くということになります。そして、今後の返済方法について協議するという流れになります。

保証協会のいいところは、代位弁済した借金について金利がかからないという点です。つまり500万円代位弁済してもらったら、500万借金しているのと同じですが利息は払わなくていいということです。元金の500万だけ払えばいいということです。まさに旧約聖書の契約と同じことになります。

次に、毎月の返済金額ですが当然保証協会はたくさん支払えということを言いますが、たくさん支払えるくらいならこんなことはしない訳で、今後の見込みとか現状の払える金額を提示して「月1万円ならなんとか払えると思います」というようなことを徹頭徹尾言っていると、相手も自分のカネじゃないので「仕方がないので当面その金額で」ということになります。あくまでも「のれんに腕押し」「ぬかに釘」みたいな交渉をして、絶対に何を言われてもケツをまくらないことです。そうすると3000万円の借金が毎月1万円ずつ3000か月(250年)の返済条件になります。あり得ない返済回数ですが実際にあり得るのです。何例も実例があります。担保があっても同様の交渉をすると強制的なことはせずに意外ととおってしまいます。あとは半年程度をめどに現状報告に保証協会に250年間行き続ければいいということになります。あくまで生きていればの話ですが・・・ 

author:吉村 以知郎, category:2012年, 11:00
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『返せない借金』について (商売のヒント vol.36)
 本当に暑い夏が続いておりますが、皆様いかがお過ごしですか?この夏はロンドンオリンピックが中心の夏のような気がします。7月27日から8月12日まであっという間の17日間でした。寝不足と暑さで結構体にこたえた方も多いのではないでしょうか?私は柔道をよく見ていましたが、金メダルを獲る難しさがよくわかりました。実力差は紙一重の世界になり、気力というか気持ちだけでも駄目で、何かそれ以外の要素が必要なような気がしました。金メダルを獲った女子柔道の松本選手は、すごい形相で気合を入れているのかと思ったら、「落ち着け、落ち着け」と自分に言い聞かしていたそうです。もしかすると平常心がもう一つの要素なのかもしれません。柔道以外でもサッカー、フェンシングや女子レスリングに女子卓球団体、バレーボールなどいろいろ感動した種目はありますが、女子レスリングは4階級の内、3階級で金メダルなんて日本の女は素手で戦わせたら世界で一番強いということになりますよね。日本の男は幸せなのか不幸なのか、いかが思われますか?

毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第36回目を始めましょう。

 

『返せない借金』について

商売をやっていると借金はつきもののように世間では言われていますし、事実9割以上の会社は大なり小なり借金はあります。ただ、私自身の経験上、借金を完済して無借金経営にした会社というのは、ほんの一握りのような気がします。私は、開業資金もない状態から始めましたので、最初、国民金融公庫(現在は蠧本政策金融公庫)から開業資金を借りてスタートしました。そのせいで今まで借金とはお付き合いしどうしとなっています。創業者あるいは経営者にとって借金は、事業を成功させるための原動力の一つになっているように私自身は思います。返済しないと大変なことになるという強迫観念から、何が何でも成功させたいという強い気持ちが出てきたことは確かです。自分で開業資金を貯めてからというのでは、まだ独立していなかったかもしれませんし、独立後も、はたしてあの一種の恐怖感念に打ち勝つためにガムシャラに仕事をしたかどうか疑わしいものです。ある意味で、自分が思っている返せる限度額の5割増し位が適正な借入額のように思います。例えば1000万円を5年返済であれば月々の元金は約17万円になります。利息含めて20万円弱の返済金額です。この位は何とかなると思っている5割増しということは、1500万円ですから25万円の元金と利息含めて30万円弱ということになります。その位が借金の限度額となるような気がします。それ以上になると、借金の返済が事業の目的になり、何のために働いているのかということがわからなくなってしまうように思えます。私の場合も、考えている金額の約1.5倍程度まで最高時にありました。会計事務所でどうしてそんなにかかるのか不思議でしょうが、独立当初は売上もそれほどないにもかかわらず、家族を食べさせていかなければならないわけですから、生活費のために借りたというのが本当のところです。理論的には、設備や人材投資のために借りてその設備や人材が新たな利益を稼ぎ出し返済原資に充てるというのが借金の理屈ですが、そのような絵に描いた餅のような話は借りるときに銀行などにしますが、実際のところは「カネがない」から借りるのであって「カネ」に余裕があるときには借金などしません。銀行もそんなことは百も承知で、保証人や担保などダメになった時に回収する術を確保しておいて、「カネがない」会社に貸そうとしているのがよくわかります。銀行員は、基本的に「金貸し」であり本質は高利貸しのヤミ金やサラ金と一緒です。返せないとなったら態度は急変します。担当が今までの営業から本部の回収専門部隊に変わり、警備員のいる鍵のかかった部屋で返済計画などを報告させるようになります。最近でこそ「貸し手責任」という言葉がマスコミなどでも使われるようになりましたが、返済交渉の場では貸した側と返す側の立場は歴然としたものがあります。「貸し手責任」などという言葉は、使いたくてもとても使える雰囲気ではありません。「返せない借金」になってしまった原因はそれぞれあるとは思いますが、そのようなときや、そのようなお知り合いがいらっしゃいましたら是非ご相談、ご紹介ください。そのようなときは、経営者の方は資金繰りで頭の中の95%以上が占められ「出口」を見つけることが困難な状態に陥っているのがほとんどだと思います。弁護士に相談すると即「破産」ということになってしまいます。社員や事業は法律で保護されている数か月分の給料や雇用保険でカバーするという発想でしかありません。そのような案件をいくつも経験していると、事業の切り出しや受け入れ先の選定をし、社員や経営者の今後の長い人生のことまで段取りをつけた「出口」を見つけて、そのために時間稼ぎや交渉などいろいろやることがあります。そこに知恵があり、経験があります。どうぞ、ご相談、ご紹介ください。

さて皆様、亀井静香というセンセイをご存じだと思います。最近、かなり影が薄くなってきているように思いますがいかがでしょうか?その亀井センセイが民主党政権ができたときに、連立与党として政権参画しました。その時に、連立を組む条件としてゴリ押しして作った法律をまだご記憶でしょうか?「中小企業金融円滑化法」という法律です。平成21年(2009)12月4日から施行されて当初平成23年(2011)3月31日までの時限立法でした。その法律が、平成23年(2011)から2年延長されて平成25年(2013)年3月31日で終了の時を迎えます。この法律は、借金はしばらく返さなくてもいいということを法律で後押ししたものとなっていました。返済条件を変更するというリスケジュールあるいはリスケという言葉も結構スタンダードなものになってきました。この法律の施行により、銀行側には条件変更の申し出があったらなるべく条件変更に応じるようにというお達しが金融庁より出され、その数字も公表するようにとのことでしたので、銀行側も従わざるを得ない状況となりました。そうすると、税理士をはじめ、いろいろなコンサルタントたちがビジネスチャンスとばかり一斉に条件変更の取り組みを始めました。条件変更だけが目的の「絵に描いた餅」の事業計画を作り、とにかく毎月の返済を減らすとこれだけ資金繰りが楽になるというわけで条件変更を推し進めていった感があります。金融庁の平成24年末の発表によると主要行(みずほ、みずほコーポレート、みずほ信託、三菱東京UFJ、三菱UFJ信託、三井住友、りそな、中央三井信託、住友信託、新生、あおぞら)で申し込みが413,421件、地域銀行等(地銀、第二地銀、埼玉りそな、その他)で申し込みが1,439,217件、信金信組で申し込みが1,227,444件となっており、農協漁協を含めた合計は申し込みが308万件を超えるものとなっており、申込金額は85兆円を超えるものとなっています。そのうち実際に実行されたのは約285万件、金額にして79兆円となっています。銀行側が断ることを謝絶と言います。面会謝絶の謝絶ですが件数は77,694件、金額は2兆円となっています。ほとんど認められたと言える割合だと思います。私はこの法律ができる前から銀行交渉をしていますが、とてもこのような数字ではないように思えます。どちらかというと逆の方が近いように思えます。謝絶されながらも結局は認めさせるというのがプロの仕事だと思っていますが、こんな誰でもOKの時代に何件やったという実績は当てにならないと思います。

その亀井徳政令も、亀井センセイの影の薄さも手伝ってか金融庁がこれ以上の再延長はしないという方針を固めたようです。その要因は、「絵に描いた餅」が絵に描いたようにならなかったことによる再リスケジュールつまり二次破綻の増加、絵さえも描けない中小企業の増加がこれ以上延長しても延長の効果がないと判断した理由のようです。金融庁は延長しないことを決定した段階で金融機関に次のような対応を求めています。

1.  金融の円滑化

  金融機関によるコンサルティング機能の一層の発揮

2.  金融規律の確保

  対象企業の適切なランク分けと貸倒引当の実施

それと、中小企業に対して次のような取り組みをしていくと発表しています。

中小企業に対する支援措置

  企業診断、最適な解決策の提示、支援を図るためのコンサルティング機能の発揮等、地域密着型金融の深化の徹底

  中小企業再生支援協議会、産業再生機構との連携強化

  事業再生支援を図るための様々な制度・仕組みの活用

以上のようになっていますが、この中で実効性があると思われるのは金融機関に対する指導のうち2番目の金融規律の確保ということだけのように思われます。要は、貸し先を厳密にランク分けして、処理を進めなさいということです。つまり、中小企業は銀行からランク分けされてダメなところは潰すということになります。そのようなことが来年の4月以降顕在化してくることは容易に想像がつきます。自己防衛の意味からも、借金のない銀行に預金口座を作り、資金を移動させておくことは重要です。自己の振出手形を使われているお客様はさすがに少なくなってきていますが、できれば手形だけはなくしていただけたら倒産ということには基本的になりません。いつでも戦える状況になっていれば怖いものはありません。カネのないところからは取りようがありません。

いつも言っていることですが、まずは売上利益の確保が至上命題であることには変わりありません。売上利益さえ確保していれば、いくらでも方法はあります。逆にいうと売上利益がなければ、出口は限られてしまいます。売上利益の基となるのは、競合に勝てる商品・サービスです。それがあって営業の仕組みも功を奏しますし、現実的な絵も描けるというものです。その部分に常に的を絞って頑張っていきましょう。


author:吉村 以知郎, category:2012年, 10:58
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『歯科技工士さんの悩み』について (商売のヒント vol.35)
  梅雨が明けて夏本番の暑さの日々が続いておりますが、いかがお過ごしでしょうか?何年くらい前からか忘れましたが、気象庁が梅雨明け宣言をしなくなりました。今年も7月15日の日曜日あたりから、素人目にも梅雨が明けたという確信的な感覚がありましたが気象庁が「梅雨が明けたとみられる」と発表したのは7月17日の火曜日でした。誰でも「梅雨が明けた」とわかる状態が2日以上経ってから梅雨明け宣言を出されても「やっぱり」という感情しか湧きません。以前は、梅雨明け宣言も気象庁の威信にかけて、過去からの膨大なデータと現状分析、気象予測という一連の過程を経て「梅雨明け宣言」の発表ということで、私たち大衆も気象庁の「梅雨明け宣言」が待ち遠しくもあり、また「ホントかな?」という気持ちも含めて、結構楽しんでいたように思います。現在の「梅雨明け宣言」では、気象庁の誰もリスクを取らなくてよくなったように思いますが、ある意味プロの威信を賭けた「梅雨明け宣言」の重みが、とても懐かしく思えますし、ウェザーニュース社の躍進の源もここにあるように思います。

毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第35回目を始めましょう。

 

『歯科技工士さんの悩み』について

私は、青藍会というコンサルタント連合の仲間に入れていただいているのですが、その青藍会の坂先生を中心にして東京中小企業家同友会というところで毎月第2木曜日の午後2時から5時のまで「販売塾」というセミナーを開催しております。その受講生のS社長という方が「販売塾」開催前の時間を利用されてご相談にみえました。今回はその時のお話をさせていただきたいと思います。

S社長は歯科技工士で今年40歳になります。歯科技工士歴20年のベテランで独立されてから6年になるそうです。直接のご相談の内容は、わが社の使命を考えているのだけれど、なかなかいい答えが出てこないというものでした。

S社長が最初に考えられた使命は「患者様の笑顔を取り戻すのが使命です」というものでした。本人は一生懸命考えたものらしいのですが歯科技工士の会社の使命ではなく歯医者さんの使命になっています。次に考えられたのが「歯科医院の手助けが使命です」というものでした。わからないでもないですが、歯医者さんにしてみれば、どうして上から目線で歯科技工士に手助けしてもらわないといけないのかというものになってしまうでしょう。お客様に対して受け入れられない使命では販売力アップにはつながりません。本人はどうしていいのかわからなくなりご相談にみえたようです。

そこで、私たちはご商売の内容を詳しく教えてくださいということで、いろいろ教えていただくことにしました。

まず、扱っている商材は入れ歯、差し歯などの歯医者さんで使う補綴物(ほてつぶつ)というものだそうです。基本的にはセラミックでできているそうです。以前は本当に職人の世界で熟練した技が必要な仕事だったそうです。ところが5年ほど前からCADCAM(キャドカム)という機械が世に出回りだしたそうです。当初は日本で40台程度しかない代物でコンピューターで立体的に削り出す装置だそうです。S社長は5年前から「そのうちCADCAMの時代が来る」と予見して、独立当初にもかかわらず導入されたそうです。S社長の予見通りCADCAMの時代が到来し、大きな歯科技工所ではCADCAMで大量生産される時代になっているそうです。大量生産されれば、自ずと値段競争になってきているようです。ただCADCAMで作成した義歯は、点数をつけるとしたら100点中50点程度の製品で、患者さんの口に入れた場合、しっくりこない場合が多く、調整が必要となってくるようです。また、CADCAMはアルバイトでもパートでも操作でき歯科技工士である必要性がなくなってきていて、歯科技工士自身もCADCAMしか知らない人が増えているそうです。そのような中、4年目になる社員さんを育てて、S社長自身も営業や勉強にあてる時間を作り出すことに成功したということです。今現在、請求先は1718件ありますが、いつ忙しくなるかわからず、忙しくなるとそれこそ徹夜に近い状態が何日も続くのだそうです。また、ほかの歯科技工士さんたちは営業をあまりしない業種というか職人なので、きちんとした営業をするとお客様はとれる可能性が高いということです。ただ、あまり営業して仕事を取ってくると徹夜続きになり、今度は体が持たなくなると心配をされていました。同業者仲間で、提携して忙しい時にはお互い仕事を回しあうということも考えているとも話されました。

さて、お客様である歯科医業界はどうかというと、歯科医の数が年々増加し、それに比例して平均の売上が減少し、歯科医の中での勝ち組、負け組がはっきりしてきて大変厳しい状況であることは、以前私もお伝えしましたが、そこをお客様にしている歯科技工士業界はもっと厳しい状況であることは容易に察しがつきます。

ここまでの話を要約すると

1.  CADCAMの登場で、職人技が必要なくなっている。

2.  CADCAMの普及で、販売単価が下がっている。

3.  売上をふやしたいが、仕事が増えすぎると処理できなくなる。

概ねこのような状況のようです。S社長の一番の悩みは3番の売上を増やしたいがパンクしたらどうしようという矛盾であるようです。

S社長に限らず、悩みというものは基本的に矛盾で構成されるようです。さてその解決できない矛盾に対して、青藍会の坂先生は、あなたの「商売の構造」を考えなさいというアドバイスをしました。S社長の目指すべき「商売の構造」つまり「商売のやり方」を考えると矛盾の解決になるということです。

 

その1として、売上を増やすとパンクするということについては

  良い歯科医を相手にする

 

つまり顧客を自分で選択することであり、単に流行っている歯科医を相手にするのではなく、自分の技術をきちんと評価してくれてお互い相通じる歯科医を顧客とすること

 

その2として、

  予備の歯科医をお客様に持つこと

 

自分と相通じる良い歯科医だけで商売していたのでは、いつ何時競合にもっていかれるかもしれないので、必ず予備と言っては失礼かもしれませんが顧客として予備の歯科医をお客様に持つことが必要です。

 

その3として

  外部同業者(外部職人)の補強

 

外部の同業者を連携という関係ではなく外注先という形で、きちっとした技術のあるところを探す。連携という関係ではなく、ちゃんとした仕事にはちゃんとした料金を払うというのが基本となるので、そのような外部職人といえるような人を探すことが重要。

 

このように自分の会社の目指すべき、あるいは理想とすべき「商売の構造」というものがわかると経営者はシャキっとします。S社長もスッキリしたようでした。最初から自分で考えてあるべき姿を目指すというのが本当の姿なのでしょうが、私を含めて独立したての頃は「そんなことより今日の飯」という感覚でスタートするのが一般的だと思います。しかし、ある時期が来るときちっと考える必要が生じてきます。社員を雇ったり、自分を取り巻く状況に変化の生じたときです。そんな時こそ、「商売の構造」という視点でもう一度考え直してみたらいかがでしょうか。

さて、「商売の構造」がある程度ハッキリしたら私の出番です。S社長の使命を考えるお手伝いに入りました。S社長に、「今まで20年間、補綴物を作り続けてきて一番こだわってきたのは何ですか?」という質問をしました。すると「適合です」という答えが返ってきました。適合とは、義歯を患者さんの口に入れたとき隙間なくピタッと収まることをいうそうです。その「適合」という部分で常に自分の中では100点を目指してやってきたというのです。私は「CADCAMは何点なのですか?」という質問をしたら「50点〜70点くらいです」と答えてくれました。「でも、S社長のところでもCADCAM使っているんですよね?」と聞くと「CADCAMでも出来たものに調整をして100点に近づけています」とのことです。「100点をとるためにはどうしたらいいのですか?」と聞くと「歯医者さんとのコミュニケーションが大切で患者さんの状況を聞くと100点に近づけられます」との答えです。「でも歯医者さんによっては、私自身は100点と思っても、歯医者さんはそのように思わないケースがあるので、自信を持って100点と言い切れないのが実情です」

どうやらS社長は、義歯の患者さんとの適合は考えていらっしゃっても、歯医者さんとの適合を考えていらっしゃらないみたいです。でもS社長のキーワードは「適合」にあるようです。S社長には、「この先は、一旦ご自分でお考えになり、アイデアがまとまったらまたお話ししましょう」ということで、次回お会いするときのS社長の使命が楽しみです。

 

author:吉村 以知郎, category:2012年, 11:02
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『大阪』について (商売のヒント vol.34)

梅雨空の日が続いていますが皆様いかがお過ごしでしょうか?6月は旧暦で「水無月」ですが、その語源はいろいろあるようです。「無」という字は現代語の「の」という字で「水の月」ということになるという説がもっともらしいですが、旧暦で6月は概ね7月になり梅雨明けの時期と重なることになるので、「水の月」というのも信憑性はどうかなあという気もします。梅雨が明けて、カラカラ天気の「水無し月」という方があっているのかもしれません。いずれにしても、過去のいつかの時代の誰かが決めたことだけは確かなのでしょう。宮廷貴族たちの隠語が語源なのかもしれませんね。あと1500年後の社会では、「AKB48」の語源を真剣に考えている学者がいるかもしれません。現代の日本人にとっては「ジョーシキ」でも未来の日本人にとっては「不可解」に映るのではないでしょうか。なぜなら、1500年前の人たちには「水無月」は、誰でも知っている「ジョーシキ」的な国民的アイドルの名前から来ているかもしれないからです。国民的アイドルの名前に意味を求めても、ただ「カッコイイから」としかならないのではないでしょうか。

毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第34回目を始めましょう。

 

『大阪』について

私はあまり関西とは縁がなく、観光で東京より西は四国と九州北部しか行ったことがありません。大阪には2回ほど講演で行ったことはありますが、どちらも日帰りで観光の時間はありませんでした。もっぱら大阪の話はテレビでの知識となります。たとえば大阪のオバちゃんはみんなヒョウ柄の服を着て、あめ玉もって歩いているなどといった類の話のみでした。そこで、今年の当事務所の社員旅行は大阪に行ってみようということで、6月の8日9日と大阪に行ってまいりました。初めての大阪で見たり聞いたりしたことをお話ししてみたいと思います。

その1 乗り物編

大阪へは飛行機で行きました。飛行機は結構乗っていますが、空港に着陸するときは海の上から街を少しかすめて空港に着陸するというのが私自身の経験則でしたが、伊丹空港へは大阪の街の真上を通過して着陸しました。東京で言えば羽田が足立区あたりにあるような感じです。地方の小都市ならともかく大阪という大都市の真上を普通に飛行機が行きかうことに、大阪に着く前からちょっとしたサプライズでした。さて、伊丹空港から宿泊先のホテルのある梅田までバスで行くことになったのですが、空港のバスというものは時刻表どおりに運行されているという既成概念が私にはあります。羽田でも空港のリムジンバスは行き先ごとに出発時刻が表示され、その時刻にきっちり発車するというのが当たり前と思っていました。その感覚で乗り場に行くと、乗車整理のおじさんがいて、「バスは満席になりましたので発車します。すぐ臨時便を出しますからそちらに乗ってください」と言っています。「臨時便」という言葉にまずビックリ。本当にすぐ臨時便が来たことにまたビックリ。いったい誰がどのような権限で臨時便の運行を決めているのか全くわかりません。たぶん乗車整理のおじさんだろうとは思いますが、東京ではあり得ない「臨時便」は乗る側にとってはとてもありがたいサービスでした。大阪は商売の本場と言われていますが、この「気の利かせ方」はさすがだなあと着いた早々思いました。

大阪市内の移動は概ね大阪市営地下鉄で移動しました。私は知らなかったのですが大阪の街も碁盤の目のように出来上がっていて、どうやら南北に走る道を「〜筋」といい、東西に走る道を「〜通り」というみたいですが真偽のほどはわかりません。ただ、西も東もわからない人間にとっては、この道が「筋」か「通り」かで、おおよその方角がわかるというのもそれなりにありがたいものです。札幌も碁盤の目になっていますが、このような使い分けはしていません。京都や奈良も使い分けているのかもしれませんが、やはり関西二千年の歴史がそうした使い分けの知恵を生んでいるように感じました。

さて、地下鉄の話に戻しますと、大阪の地下鉄はどうやら碁盤の目に作られているようです。南北に5本、東西に3本、港周辺に1本あるようです。ですので、A地点からB地点に行くのに何通りもの行き方があり、どの地下鉄に乗っても必ず目的地に行けるようになっているみたいです。ただ、乗ったと思うとすぐ2駅ぐらいで乗り換え、そしてまたすぐ乗り換えという乗り方になってしまいます。東京では乗り換えが面倒なので、できれば乗り換えの少ないルートを選ぶようにしていますが、大阪では乗り換えが当たり前ということになっているみたいです。ただ、運営する側からすると効率が悪いような気がします。全ての地下鉄が「なんば」とか「梅田」をとおっていれば乗車効率は上がると思いますが、碁盤の目ではそういうわけにもいかないようです。

その2 食べ物編

大阪は、観光よりも食べ歩きのために行ったようなところがあります。私も以前行ったときは、ほとんど食べていなかったのでとても楽しみでした。たこ焼きやお好み焼き、串揚げに焼き肉、うどんなどとても二日で食べきれないほどでしたが順にご紹介しましょう。まず、梅田に着いた後、新世界の通天閣に行きました。スカイツリーとまではいかなくても東京タワー程度かなと想像していましたが東京タワーの三分の一くらいでちょっと苦笑い。通天閣は二代目だそうで最初は「新世界」という遊園地のシンボルタワーだったそうです。一代目はパリの凱旋門の上にエッフェル塔を載せたデザインだったそうで、関東ではあり得ない発想に少し感激しました。その新世界界隈は「串揚げ」のお店で有名だそうです。すこし人気のありそうなお店を探して早速注文すると、焼き鳥の串より少し細めの串に自分の好きなものが刺さって、から揚げに近い状態で出てきました。それを秘伝かどうかわからないウスターソースにつけて食べるというものです。確かに酒のつまみには一本100円前後なので、五・六本食べるというのはいいかもしれません。ただ、大阪まで来てどうしても食べたいかと聞かれると入った店のせいかもしれませんが「??」という感じです。串揚げのお店で「この近くでおいしいうどん屋さんはありますか?」と聞いたら鴨うどんのお店を紹介してもらいました。外見は立ち食いそば屋のような外見なので大して期待せずに入ってみると、椅子席のカウンターが12席くらいあり2時近かったと思うのですが結構人が入っていました。並でうどんが2玉入っていて650円くらいだったと思います。うどんは大きな器に釜揚げに近い状態で入ってきました。つけ汁は鴨を薄くスライスして甘く煮込んだようなつけ汁で、吉野家の牛丼の鴨バージョンみたいな味で最高においしいうどんでした。お店の名前は「鴨錦(かもきん)」というお店で、吉祥寺にもフランチャイズ店があるようです。是非、一度味わってみてはいかがでしょうか?また、フランチャイズも募集していましたので場所にもよりますが、結構いけるかもしれません。さて、このお店では味もサプライズだったのですが、もう一つビックリしたことがあります。関西はうどん文化で、東京のそば湯の使い方もほとんど知らない人ばかりだという先入観があったのですが、何と半数の人がうどんではなく蕎麦を食べていました。大阪の立ち食いうどんを是非とも食べてみたかったので夜中に地下街の立ち食いうどん屋にもいきましたが、ここでも約半数の人が蕎麦を食べていました。やはり、百聞は一見にしかずとはよく言ったもので、現地に行ってみないとわからないことはいっぱいあるということですね。

次は、焼き肉。大阪は焼き肉も本場だそうで、その中でも鶴橋という駅の周りが焼き肉街だそうです。鶴橋の地下鉄の駅を上がると、もう焼き肉の煙が充満していました。あらかじめ予約していたお店で食べましたが、かなり限定された地域でこれだけ焼き肉店がひしめいていると自然と競争が激しくなり、結果として全体のレベルが上がっていくように思えました。味も最高で東京ではなかなか食べられないレベルのお肉で、かなりいろいろ注文しましたが飲み代込みで一人6000円弱というのはとてもお値打ち感がありました。

その3 人編

大阪というと、私的にはやはりオバちゃんのイメージが強かったのですが今回の旅行で強烈に感じたことがありました。それは「人の若さ」でした。行ったのは金曜日で、昼間はちょっとした違和感程度だったのですが帰宅時間以降は、はっきりと強烈に感じました。例えば、東京では道行く人を観察すると年齢層が平均的に分布しているように思います。つまり若者から団塊世代さらにその上の世代まで平均的に目にすることができると思います。さらに言うならば幾分団塊世代の方が幅を利かしているように感じられます。そのような年齢構成は、日本の標準であり東京でも標準で何も違和感なく受け入れてきたことでした。日本の各地を旅行しても大体その標準か、ちょっと上に偏っている程度で違和感というほどではありませんでした。私は、着いた日の夜10時ちょっと前から立ち食いうどん屋さんを探そうと梅田の地下街を地図も持たずにウロウロ1時間半ほど歩き回っていました。当日、大阪は夜から激しい雨で帰宅する方は地下街を通って乗り換えをされているようでした。梅田はターミナル駅のようでいろいろな路線が乗り入れているみたいで、いろいろな方向からたくさんの人がそれぞれの駅を目指して歩いていきます。路線の数は正確にはわからないですが、雰囲気的にはJRの新宿駅と少し離れた歌舞伎町あたりに池袋駅があるような感じです。その合間を人の波が行き来するのです。その人々を何気なく観察していると9割がたが30代前半から40代半ばの人で占められているように感じました。東京で幅を利かせている団塊世代の方を探してみると本当にごく少数しか目にしません。一時的なものかとも思い、年齢層を中心に観察しながら歩き回ってみると最初から最後までその傾向が続いていました。東京ではあり得ない光景ですが、よく考えてみると高度成長期の東京はもしかしたら同じ光景だったかもしれません。翌日は「なんば」のほうに出かけたのですが、こちらも割合的にはあまり変わらないような気がしました。いったい大阪の団塊世代は何してるのかなとも思いましたが、若者のエネルギーが団塊世代を押しやっているのかもしれません。私の事務所のお客様でも大阪の得意先に痛い目にあっていらっしゃる方は結構いらっしゃいますが、ある意味何でもアリの世界で、東京のスマートな商売とは基本的に違う戦後のヤミ市風の隙があればどんどんのし上がってやろうというような世界で商売をしているそのような感覚をおぼえました。テレビなどの報道では大阪は不況で大変というように言われていますが、実際のところはちょっと違うかもしれません。昔読んだ邱永漢さんの本に書いてあったことを大阪の街で思い出しました。邱永漢さんは旅行などでいろいろな街を訪れるとそこで必ず考えるのだそうです。「この街で、もう一回裸一貫から勝負できるかな?」と考えるのだそうです。二十数年ぶりに、邱永漢さんの言葉を思い出させてくれた大阪の街でした。

author:吉村 以知郎, category:2012年, 16:00
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『鉄屋五十余年−私の経営語録』について (商売のヒント vol.33)
 5月に入り、本当にいい季節になりました。梅雨入りまでの1か月程度ですが、東京で一番過ごしやすく快適な陽気で、最高の季節のように私自身は感じますが皆様はいかがですか?そんないい季節なのですが、5月6日には、関東地方で雹まじりの雷雨があり、茨城県では竜巻まで発生しました。テレビでは竜巻の襲ってくる様子がよくわかり、自然の猛威を目の当たりにしました。その後の数日間も不安定な天気が続き、竜巻に巻き込まれた場合の注意として、頑丈な建物の低い部分や地下室などに避難することなどニュースで放送されていました。ちょうどその時期なのですが、ある本を読んでいると「オズの魔法使い」の引用がされていました。「オズの魔法使い」は私自身読んだことがなかったので取り寄せて読んでみると、超ビックリ!なんと冒頭でカンサスのドロシーの家を竜巻が襲い、エムおばさんは地下室に逃げ込みましたがドロシーはすんでのところで逃げ遅れ、家ごとオズの魔法の国に飛ばされるというものでした。この本は1900年に書かれたものですので、本場アメリカでは100年以上前から竜巻対策として地下室が定番だったということに本当に驚きました。

毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第33回目を始めましょう。

『鉄屋五十余年−私の経営語録』について

私の机の上のマットには、いつもこのコピーが入っています。「先見経済」という雑誌の1999517日のコピーで、浦安の西村鋼業蠅寮沼湿‖析困気鵑箸いκが書かれたものです。それではご紹介いたします。

 

私は大正八年、東京・本所の鉄屋(鋼材特約店)の長男として生まれた。大学の経済学部を卒業したのは太平洋戦争勃発の年であった。直ちに兵役。三年後、終戦を迎え復員。父の経営する鉄鋼販売業を受け継ぎ、空爆で灰燼に帰した焼け野原にほったて小屋を建て商売を始めた。二十八歳の時であった。

大学で学んだ経営学などなんの役にも立たず、商売の経験もない。店で働いていた復員者を含め四人の社員で、焼け落ちた倉庫に古鋼材を集めて商売を始めたのである。人には騙され、泥棒にやられ、焦げ付きにもあい、何度も倒産の危機にさらされた。そのたびにもう会社をやめようと思ったものだが、五十余年、苦労と忍耐を重ね、何とか乗り切って今日に至っている。

その結果、現在、本拠を浦安に置き、地方支店三ヵ所、従業員110名、年売上高160億円、未だに支払手形の発行なしという健全経営にようやくたどり着くことができた。その間、私なりに経験したことを語録としてまとめてみたので、その一部を御笑覧いただきたい。

  「君子は王道を歩く」が私は君子ではない

私は道草を食って歩く。そこには花あり草あり、善人・悪人、金持ち・貧乏人、賢者・愚者、あらゆる人々が群れている。私はその中で、もがきながら生きてきた一商人である。

  存在価値の自覚

鉄鋼流通の中で当社の社会的・経済的存在価値、責任はどこにあるのか。これを常に問いつづけてきた。売買行為だけが商売ではない。相場には変動がつきものである。その中で需給バランスを図り、価格の安定化・適正化、流通の活性化を図るという重大な役割と責任が、われわれ流通業者にはある。それを忘れてむやみに販売競争に走るようだと、商社としての存在価値が失われ、生き残っていけないことになる。

  拡大は易く成長は難し

拡大は形であり、成長は内容である。すなわち、内容が充実しなければ成長はできない。内容を充実させるには、経営者、幹部、社員個々の能力を向上させなければならない。内容(成長)を伴わない拡大は企業を危うくさせるだけである。

  社長は臆病である

臆病とは慎重ということでもある。トップにはあらゆるリスクを予想しリスクを避けるような慎重さが求められる。その意味で私は臆病である。博打を打つような冒険を会社運営に持ち込んではならないと思っている。

  変化に敏感であれ

経営者は時代の流れ、環境の変化、市場の変化に注意を怠ってはならない。そして、それに伴う価値観の変化に機敏に対応できるようにしなければならない。

  経営に妙手なし

名人は妙手で勝とうとしない。凡手で勝つのが本当の名人である。「妙手に勝って妙手で負ける」ともいう。

  負け犬になるな

経営に行き詰まり少しでもあきらめたら負けだ。負け犬には誰も助けをださない。

  お世辞をいう人に近づかない

お世辞をいう人より、自分を常に批判する人を大切にしたい。その逆をいく人がなんと多いことか。

  和をもって貴しとせず

和とは妥協であり去勢である。役員会で同意見の者ばかりを集め議論していても発展はない。トップとは違う意見を持つ者を意図的に役員に据えることも必要ではないか。

  人には欠点はつきもの

人には欠点があり、隙がある。だからこそ人が集まってきて商売がうまくいくこともある。隙のない人間には人がついてこない。

  倒産会社の再建は労多くして効少なし

倒産した会社をみて、意気に感じて再建に乗り出す人がいるが、たいていはうまくいかない。資金的にも多くを要するし、倒産した会社自体にも問題が多い。経営者をはじめ幹部たちが無能だから倒産したのであるから、そういう会社を立て直すのは大変だ。会社再建は創業より難しいと思わなければならない。

 

以上のように、西村勝太郎さんは書かれています。いろいろ参考になる点があると思いますが、私が一番すごいと思うのは、これだけの文章を書くにしてもそれなりの経験から、すぐに書けるわけはなく、たぶん毎日ノートに思ったこと、考えたことを書き記していったと思います。日記のようになっていたかもしれませんが、その日にあったことや、考えたこと思ったことを文章にするというのは、簡単そうでなかなかできないことだと思います。それを50年以上続けられ、その中から私たちに経営のエッセンスを教えていただいたことに感謝する次第です。西村勝太郎さんは平成17年1月に亡くなられたそうですが、経営語録は今も生き続けています。

author:吉村 以知郎, category:2012年, 16:15
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『顧客と個客』について (商売のヒント vol.31)

日差しの強さにやっと春の訪れを感じることができるようになってきました。菜の花や梅もあちらこちらに咲きだし、桜の開花が心待ちの今日この頃ですね。

去年の今頃は、震災の余波でテレビをつけると公共広告機構のCMばかりだったり、計画停電だったり本当に大変な時でした。当時は計画停電が夏にも実施される予定で、いつまで続くのだろうと心配していましたが国民、企業の節電の努力で杞憂に終わりました。使いたいときにスイッチ一つで電気がついたり、食べたいものがスーパーやコンビニで普通に買える、あらためて、平時のありがたみを感じることができていると思います。私の家でも照明は省エネタイプのものに3部屋日曜大工で入れ替えました。今の照明器具は、簡単に設置できて明るさも調節でき、しかも省エネ長寿命低価格ということで、もっと早くやっておいてもよかったなという感じです。事務所の照明も省エネのLED蛍光灯に変えたいと思っていますが、まだ一般的に出回っていないのでもう少し時間がかかりそうです。

毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第31回目を始めましょう。

 

『顧客と個客』について

お恥ずかしい話なのですが、最近になってやっとわかってきたことなのでお話しさせていただきます。よく「顧客第一主義」というスローガンを耳にし、目にすることがあります。いわゆる「お客様は神様です」系の言葉で、お客様が一番大切でお客様の要望には何をおいても全力で答えなければならないというもののように私自身は理解しています。どんな経営の本を読んでもイロハのイの部分で出てくる言葉のように思います。例えばビックカメラという量販店がありますが、ビックカメラの企業行動憲章を見てみますと1番は「お客様第一主義の実践」となっており、その説明は「社会的に有用な商品・サービスを安全性や個人情報・顧客情報の保護に十分配慮して提供し、お客様に満足していただき、信頼を得ます。」となっています。ビックカメラに限らず「顧客第一主義」あるいは「お客様第一主義」を掲げている企業はかなりの数に上るものと思います。私はあまり家電マニアではないのでビックカメラについてどうこう言える立場にはないのですが、もし、私がビックカメラの社員で企業行動憲章の一番に「お客様第一主義の実践」となっていたら、たぶん経営者が思うところの「お客様第一主義の実践」とはかなり違う行動をとっているのではないかと思います。そんな誤解を解くためにも説明書きが加えられているのでしょうが「社会的に有用な商品」を提供して「お客様に満足していただき、信頼を得ます」という説明書きでも十分に理解できないと思います。どうしてかというと「お客様」は誰なのか?という大前提が語られていないということにあると思います。店に来たお客様すべてのことを「お客様」というのかどうかという部分が大切なのではないかということが、この年になってやっと少しわかってきたように思います。私も携帯を買換えたのは有楽町のビックカメラでしたが、対応したのはたぶんAUの社員かアルバイトのお嬢さんでした。代金を払う段になって連れて行かれたレジのかなり年齢のいったお姉さん?は、たぶん社員さんなのだろうとわかりました。お嬢さんとお姉さんの対応の差に「???」と感じたのを、今書いていて思い出しました。

それはさておき、店内は平日の昼間でもとても混んでいてかなりの「お客様」がいたことは確かです。百人いたら百様のニーズがあって、千人いたら千様のニーズで来店しているのでしょう。その「お客様」すべてのニーズに答えることが「お客様第一主義」という理解につながって、そのすべての「お客様」のニーズに答えることが社員の役目という理解をして私なら働いていることと思います。それはそれで大枠では間違っていないでしょうし、ビックカメラほどの大店舗であれば、それなりに品ぞろえの面でもニーズを満たすことは可能でしょう。ただ、大店舗といっても無限大ではないのですから世界中の家電を置けないのは明白ですし、無理難題を言ってくる「お客様」も当然いるはずです。ここで登場するのが説明書きの第一番の「社会的に有用な商品」を提供するのがビックカメラの役割となります。「使命」と言い換えてもいいかもしれません。「社会的に有用な商品」というと、すべての「お客様」は「有用な商品」だからビックカメラに買いに行くわけですが「社会的に」という言葉が入ると「社会的に有用な商品」の選定は「お客様」ではなくビックカメラがすることになります。ということは、まずビックカメラが「社会的に有用な商品」と判断した商品を提供するというか品揃えすることになります。そのうえで、その品揃えを理解した、または期待した「お客様」だけを満足させ信頼してもらうことがビックカメラの「お客様第一主義の実践」ということになってくるのではないでしょうか。たとえば「ヨドバシカメラにはAというメーカーの高性能家電製品が置いてあるのに、どうしてビックカメラにはないのか?」というお客様がいたとします。この場合の社員の対応はいろいろあると思います。「すみません。すぐに仕入れをしますので来週までお待ちください」という人もいるでしょう。または単純に「ウチでは置いていないんですよね。すみません」という人もいるかもしれません。この対応はそれぞれ、単純に「お客様」に対して社員なりに誠実に対応しているとは思いますが企業行動憲章の「お客様第一主義の実践」という観点からは少し疑問が残るのではないでしょうか。なぜなら、ビックカメラが「社会的に有用な商品」と判断した商品を取りそろえているわけですから、Aというメーカーの高性能家電製品は社会的に有用ではないとビックカメラが判断したということになります。実際にはAというメーカーとBというメーカーの類似した高性能家電製品の性能・コストなどを事前に比較検討して、Aというメーカーの製品よりBというメーカーの製品が優れている、または「社会的に有用な商品」として判断し、品揃えをしているはずです。企業行動憲章からは、少なくてもそう読み取れるはずであり、経営者の意向もそのはずです。そこまで企業行動憲章の「お客様第一主義の実践」を深く理解している社員であれば、先ほどのお客様の質問に対して「当店ではA社の製品とB社の製品を比較して、性能・コスト両面においてB社の製品が勝っていると判断いたしました。お客様のためにも、ぜひB社の製品をお買い求めください」という回答になるのではないでしょうか。しかし「そんなことは余計なお世話だ。客が欲しいと言っているA社の製品を用意しろ!」というモンスターペアレントのようなお客様もたまにはいるかもしれません。その時は「当店では、社会的に有用な商品をお客様にお届けしてご満足いただき、信頼していただいています。どうしてもというのであれば是非他店でご購入下さい」というような回答になるものと思われます。

たぶん、どの中小企業でも経営者がお客様と対応するのであれば上記のような対応になるものと考えますが、社員の方が対応した時には、はたしてどの程度上記のような対応が取れるでしょうか。「お客様第一主義の実践」という言葉に秘められた深い意味まで理解して初めて自信を持って対応できるようになると思います。そのために必要なのは「企業の存在意義=使命」というものを、きっちりと社員の皆様に理解していただく必要があるのではないでしょうか。何のために当社は存在するのかという根本の部分を、経営者や社員が自ら考えて絞り出して答えを出すという作業をして初めて言葉に力が宿るような気がします。そうするとお客様が「一般顧客」から企業使命というスクリーンを通過した「個客」ということになり、社員でもブレずに「個客」に対応することができるようになると思います。是非、皆様も「企業の存在意義=使命」というものを再確認され、言葉を絞り出し、浸透させてみてはいかがでしょうか。

古い話になりますが歌手の三波春夫さんもコンサートに来たお客様、つまり「一般顧客」ではなく、三波春夫さん自身がお客様を喜ばせたいと考えて企画したコンサートを観たいという網の目を通過した「個客」にしか「お客様は神様です」と言ってはいなかったように思います。

 

author:吉村 以知郎, category:2012年, 14:20
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『すでに始まっている未来』について (商売のヒント vol.30)
 今年の冬は、とても寒い冬ですね。例年に比べるとずいぶん寒く感じるので、最初は「私も年を取ったのかな?」と思っていましたが、実際に平均気温と比べると寒い日が多いようです。その原因は「北極振動」というものらしいのですが、専門ではないので詳しいことはわかりませんが、北極の気圧と中緯度の気圧の差が多ければ暖冬になり、少なければ寒い冬になるというような理論みたいです。積雪の多いところでは本当に雪下ろしが大変なようですが、私も北海道にいたころは、よく屋根に上って雪下ろしをしていました。「何とかと煙は高いところに上りたがる」と言われますが、私は結構屋根に上るのが好きで雪が積もるのを心待ちにした記憶もあります。皆様も北海道に行ったときに街並みをご覧になるとわかると思いますが、屋根がトタン張りになっていて、こちらのような瓦屋根はほとんどありません。雪を下す時を考えてのことだと思いますが、上京した当初は、瓦の屋根とソテツ系の植物が庭先に植えられているのを見て随分奇異に感じていたことを今でもはっきり憶えています。
  毎度のことながら、皆様の『商売』の分野については素人の私ですので未熟な私の哲学や思い込みもかなり含まれていくことになるとは思いますが、その時は御笑覧いただければ結構です。それでは第30回目を始めましょう。

『すでに始まっている未来』について
  以前、少しお話したことがあるとは思いますが、未来は突然やってくるものだけではなく「すでに始まっている未来」もあります。そのいい例が国の施策です。国会では、まともな議論の様子があまり報道されず、大臣の資格テストみたいな部分がクローズアップされています。見る方もいい加減ウンザリといったところですが、平成23年12月24日に閣議決定された国家戦略会議が作成した「日本再生の基本戦略」〜危機の克服とフロンティアへの挑戦〜というものがあります。国家戦略会議(国家戦略室)は、政治主導の政策決定を実現するため、縦割り行政を打破し、総理のリーダーシップの下に新時代の総合的な国家ビジョンを打ち出していくことを目的として内閣官房に設置された総理直属の機関です。具体的には、「税財政の骨格」、「経済運営の基本方針」のほか、内閣の重要政策に関する基本的な方針等のうち内閣総理大臣から特に命ぜられたものに関する企画・立案や、政府全体の総合調整を任務としているそうです。要は、野田総理の考えやビジョンを方法論を含めて検討し具体的にする機関のようです。内閣の閣議決定は、首相が交代したり、政権が代わると以後オシャカになってしまうように思われますが、その後、縮小されたりはしますが何年も生き続けています。消費税を導入した竹下内閣は昭和63年に、消費税導入の見返りとして「ふるさと創生1億円事業」と銘打って各自治体に1億円ずつ配布したのは皆様ご記憶のことと思います。配られた1億円をどう使うかでいろいろ話題になりました。金塊を買って展示したところ、盗まれてしまったなど20数年たっても憶えています。その「ふるさと創生1億円事業」など20数年経っているので、今は何も行われていないように思われますが、総務省の管轄で財団法人地域整備総合財団というものがあります。別名「ふるさと財団」といい、今でも年間6億程度の予算でいろいろ事業をやっているようです。そこでは、役人の天下りと御用商人の構図が推測されますが実際に今でも機能しているようです。
  そう考えると、今回の「日本再生の基本戦略」〜危機の克服とフロンティアへの挑戦〜も民主党の政権が最長1年数か月で交代したとしても、あるいは野田首相が交代したとしても数年から10数年のスパンで施策が継続する可能性が強いといえます。ということは、未来がすでに始まっていて、見えているものがあるということになるのではないでしょうか。予言者でも超能力者でも何でもない普通の人でも、注意力と想像力だけあれば未来が一部分だけでも見通せることになります。
  具体的には国家戦略室のホームページ(http://www.npu.go.jp/policy/)の
  http://www.npu.go.jp/policy/pdf/20111226/20111224.pdf
をご覧いただきたいのですが、今回は抜粋してご紹介いたしましょう。
  はじめに現状認識があり、それに対して今後どうするのかということが書かれています。
  今、我が国は大きな危機に直面している。
我が国は、成熟社会の新しい時代に応じた産業構造への転換が遅れ、「失われた20 年」に加え、東日本大震災、原発事故、円高、世界的な金融市場の動揺など、過去に経験したことがない多くの重大な困難に直面しており、正に「歴史の危機」のまっただ中にいる。正に、我が国は、未曽有の人口減少社会を目前に控え、元気のある国として発展していくか、それとも衰退していくかの大きな分岐点にある。(P1)
  この部分が現状認識で、それに対し4つの施策を掲げています。
1番が「震災・原発事故からの復活」2番が「経済成長と財政健全化の両立」3番が「新成長戦略の実行加速と強化・再設計」4番が「新たなフロンティアへの挑戦」となっています。
  まず、最初の「震災・原発事故からの復活」から見てみましょう。具体的施策は次のようになっています。

<被災地で新成長戦略を先進的に取り組む主な施策例>(18.19P)
〇 再生可能エネルギーの導入支援・研究開発拠点の整備
  再生可能エネルギーの導入支援、スマートコミュニティの構築、福島県沖における浮体式洋上風力発電の実証や、大学、研究機関、企業等が参画した研究開発拠点の整備を通じ、産業の振興や雇用の創出を図る。
〇 地域資源を活用した電力・熱等のエネルギー供給システムの導入
  震災廃棄物、間伐材、小水力、下水汚泥等の地域資源を活用した電力・熱等のエネルギーの供給、再生可能エネルギー導入拡大のための事業化計画策定や防災拠点等への導入支援、ガスコジェネレーションシステムの導入支援等によるエネルギー利用の効率化を通じて、低炭素の地域づくりを行う。
〇 東北大学を中心とした東北地区の研究活動と連携した地域的な医療健康情報の蓄積・共有・活用(東北メディカル・メガバンク計画)
  東北大学を研究の中心とし、被災地の方々の健康・診療・ゲノム等の情報を生体試料と関連させたバイオバンクを形成し、創薬研究や個別化医療の基盤を形成するとともに、地域医療機関等を結ぶ情報通信システム・ネットワークを整備することにより、東北地区の医療復興に併せて次世代医療体制を構築する。
〇 革新的な医薬品・医療機器等の開発推進
  復興特区による規制緩和や研究開発及び実用化のための拠点の整備等により、革新的な医薬品、医工連携による医療機器、医療・介護ロボットの開発や医療・介護周辺サービスの提供を行う。
〇 公共施設へのPPP/PFI 導入等による復興の促進
  PPP/PFI の活用を通じて公共施設に民間主体による運営を導入するなど、民間の資金や知恵の取り込みを推進する。
〇 官民が連携した被災事業者の復興支援
  東日本大震災事業者再生支援機構や産業復興機構等の活用により、民間金融機関等と連携して、将来を見据えた被災地の事業者の復興を支援する。
〇 東北観光博(仮称)や東北応援ツアーの実施
  東北観光博(仮称)開催等を通じ、国民運動的に東北旅行の需要を喚起し、東北地方と観光客の交流を進めることなどにより、東北地方の活性化を進める。
〇 放射線・放射性物質に係る研究開発の推進
  福島県が行う放射線医学の研究開発拠点の整備、放射線や除染に関する情報発信等を支援し、福島の再生・復興につなげる。
〇 世界的な産学官連携の構築
  東北大学を中心に、研究機関、産業界等による産学官連携を進め、世界トップレベルの技術の産業化等を通じ、東北地方における産業集積を進める。
〇 情報通信技術の活用による地域の情報化
  災害に強い情報通信インフラの整備や地域クラウドの導入により、安全・快適な地域の情報化と地方自治体の業務効率化を進める。
〇 効率的で強靭じんな生活必需品等のサプライチェーンの構築
  サプライチェーンの災害への強靭じん化と産業の効率化を両立して進めるため、食品などの生活必需品に関する生産・在庫情報等の情報集約システムや、災害時における物資輸送等に係る情報を共有できるシステムの構築を進める。
〇 農業の6次産業化・農商工連携
  被災地の農林漁業者等による食品産業事業者や観光事業者、商工事業者等との連携や、先端的農業技術の実用化等の先導的な取組を支援する。
〇 事業復興型、全員参加型の雇用創出
  被災地雇用の中核となる事業における被災者の雇用や、全員参加型社会の実現のために地方自治体が企業・NPO 等に委託して公共サービスを提供する事業における雇用の創出を支援する。

  このように、巻末には詳しく掲載されていますが、すべてご紹介することはできないので以下は見出しのみのご紹介とさせていただきます。
  2番の経済成長と財政健全化の両立は消費税増税の話なので具体的施策はありません。3番の「新成長戦略の実行加速と強化・再設計」については、次のとおりです。

<当面、重点的に取り組む主な施策>
○ 投資協定、租税条約、社会保障協定の重点的・積極的な推進
○ 立地補助金の活用等による競争力強化
○ 円高メリットの活用による海外M&A の促進や資源確保等
○ 国際戦略総合特区の活用
○ 「アジア拠点化・対日投資促進プログラム」の着実な推進
○ 偽造品の取引の防止に関する協定(ACTA)の早期発効・参加促進等による知的財産権の保護強化等
○ パッケージ型インフラ海外展開の拡充
○ 中小企業の海外展開支援等
○ ポイント制の早期実施による高度人材の受入れ推進
○ 経済連携協定に基づく看護師・介護福祉士候補者受入れの仕組みの改善
○ 経済のグローバル化等を踏まえた民法(債権関係)改正
○ クールジャパンの推進
○ 少子高齢化、エネルギー環境制約等の課題克服による市場拡大
○「グリーン成長戦略(仮称)」の策定
○ 世界レベルの医薬・医療技術のインフラ整備
○ 次世代医療で世界をリードする体制づくり
○ 創薬・医療機器開発等で「世界をリードする日本」を実現する戦略の策定
○ 中小企業の潜在力・経営力の強化
○ 「科学技術イノベーション戦略本部(仮称)」の設立
○ 産学官連携による「死の谷」の克服や地域の産学官共同研究開発の推進
○ 情報通信技術の利活用による国民の利便性の向上と新産業創出
○ 行政刷新の取組と連携した規制改革の一層の推進
○ 宇宙空間の開発・利用の戦略的な推進体制の構築
○ 官民連携による成長マネーの供給拡大
○ 総合的な取引所(証券・金融・商品)の創設の推進
○ 保険会社の成長力・競争力強化
○ 不動産投資市場の活性化による資産デフレの脱却
○ 「資本性借入金」の積極的活用
○ 銀行、証券会社等の金融仲介機能の強化
○ 「成長ファイナンス関係閣僚会議(仮称)」の設置
○ 持続可能な力強い農業の実現
○ 6次産業化・成長産業化、流通効率化
○ エネルギー生産への農山漁村の資源の活用
○ 森林・林業再生、水産業再生
○ 訪日外国人旅行者の増大に向けた取組と受入環境水準の向上
○ MICE(Meeting, Incentive, Convention, Exhibition/ Event)の誘致・開催の推進
○ 観光需要拡大と雇用創出のための地域の取組支援
○ ニューツーリズム等の取組支援
○ LCC(Low-Cost Carrier)の参入促進


以上が「新成長戦略の実行加速と強化・再設計」の施策です。
次に「新たなフロンティアへの挑戦」です。

<当面、重点的に取り組む主な施策> ○ 「若者雇用戦略(仮称)」の策定・実行
○ 就学支援の実施
○ 子ども・子育て新システムの実現
○ 女性の活躍の促進や仕事と家庭の両立支援等
○ 希望者全員の65 歳までの雇用確保のための法制上の措置等の検討
○ 非正規労働者に関する新たなルールづくり
○ 非正規雇用問題に横断的に取り組むための総合的ビジョンの取りまとめ
○ 地域における雇用創出の取組の推進
○ 社会的包摂政策の推進
○ 「生活支援戦略(仮称)」の策定
○ 社会を生き抜く力の養成
○ 教育と職業の円滑な接続
○ グローバル人材の育成
○ 企業の採用慣行改革の促進
○ 産学官が連携した職業教育や職業訓練の強化
○ 「ゼロエネルギー住宅」、集約型まちづくり等の推進による低炭素・循環型の持続可能な社会の実現
○ 都市における防災、環境性能の向上
○ 「環境未来都市」構想の推進
○ 地域活性化総合特区の活用
○ 地域再生制度等の見直し
○ 都市・農山漁村の交流促進、地域資源の活用と域内循環等を通じた地域力の向上
○ 「新しい公共」をいかした公共空間の再生
○ 中古住宅流通・リフォーム市場の拡大
○ 災害に強い国土・地域づくり等の推進
○ 東京圏の中枢機能のバックアップ等
○ 強靭なインフラの整備
○ 途上国等の経済を支える人材の育成
○ 基礎教育支援を通じた人材基盤の拡大
○ 保健・医療・衛生の改善
○ 我が国の技術をいかした途上国の防災対策支援
○ 農業・食料分野での支援等
○ 国際機関に勤務する邦人職員の増強
○ 日本食文化の無形文化遺産への登録
○ 日本ブランドの再構築
○ グリーン経済への移行における貢献(「課題先進国日本」としての貢献)
○ ODA の戦略的・効果的な活用


  以上が「日本再生の基本戦略」〜危機の克服とフロンティアへの挑戦〜に記されている今後の施策です。各項目ごとに説明が付されていますので、ぜひご一読なさって、新たな商売のヒントにされることを期待しております。また、担当者には原本を持たせますのでコピー等ご入り用でしたらお申し付けください。
author:吉村 以知郎, category:2012年, 15:22
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